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2019-01-08

Jimbo’s Best Albums and others of 2018


インターネットに書かれる文章というのは、「みんな気になってるあのトピックをいかに上手く表現するか、絶賛するか、悪態をつくか」という大喜利大会ではなく、他の誰でもないあなたの、取るに足らない些細な話を、現実空間の「あなた」ではなく「ハンドルネームとしての誰か」として放出し、受容するものであってほしい、だから自分もそうするのだという話をいろんな場所でもう4回ぐらい書いている気がするけど(この文章を書く昨夜、隣の部屋のカップルが深夜3時からセックスを開始して自分の部屋にも喘ぎ声が響き渡り、見知らぬ娘さんの嬌声を意図していないとはいえ聞いてしまっている自分はいったいなんなんだろうと申し訳なくなると同時に、AmazonプライムでTV版初代マクロスを視聴し、ミンメイのキスシーンを目撃してしまう輝に感情移入すると同時に、正月明け最初の勤務前ということで仕事であれやろうこれやらなきゃと考え事をしていたら1時間しか眠れず、いまもとてもねむい。でもこういう「他人のプライベート全開な様子」に思いがけず出会ってしまうこともけっこうインターネット的な状況だよなともおもったりする)、2018年はついにその底が抜けてしまったように感じる。もちろんこれも定量的なデータがあるわけではなく、自分がそうおもっているだけだ。仕事上の要請もあってSNSを実名名義にしてしまったし、hagexさんが亡くなった事件は彼との面識がないのに「インターネットカルチャーの終焉が訪れた」ぐらいのショックを覚えて2週間ぐらい引きずった。

で、音楽の話。自分は「その年に最先端だ!と絶賛されている音楽がピンとこなくても、数年後にわかればそれでいいか」とおもっている怠惰な人間なのだけれど、それでもヒップホップがぜんぜんわからないという状況ぐらいは変えたいなとおもい、フジロック/サマソニを中心にヒップホップ勢を観まくった。ケンドリック・ラマーやチャンス・ザ・ラッパーを観て、バックバンドの演奏力も含む完全総合芸術としてのヒップホップの底知れぬパワーに完全にアテられたし、KOHHやHigher Brothersを観て「トラップのリズムはパンクのoi縦ノリ的に受容され、合唱されている」というたぶんすげー基礎的なことがようやく体感できたし、BAD HOP@武道館に大挙して訪れていたティーンエイジャー(そしてその多くが初ライヴ参加のようにも見えた)を見て、この子たちはロックだったら惹きつけられていなかったのかもしれないのだなと寂しい気持ちになったりもした。そして年末、象ラジ年間ベスト回の収録前日に出会ったARKHAMというエモラップな日本人クルーのアルバムを聴き、ハスリングというにはやぶれかぶれすぎるリリックと全編に響き渡る叫び声(ディスりではなくとても好きだ)を前にして、かつて高校時代にオシリペンペンズに初めて出会った時の衝撃のような「理性によってセーブされない、本当にヤバいものがここにはあるのかもしれない…!」というゾクゾクした気持ちになれた。

年間ベストの内容は一応順位は決めているもののほとんど順不同でもあって(それでも「無理やり順番を選んで決める」という選択から浮かび上がってくる考えがあると思っているのでそうしてる)、全体的に自分はそのアーティスト、バンドがあるひとつのことを「やりきった!」と感じられる作品が好きなのだと思う。現代の世相を反映しているかどうかも好きになれるポイントのひとつではあるけれど、それだけが好きな要素だというわけでもない。

ちなみに2018年で1番多く聴いて歌詞で泣いたのはFINAL SPANK HAPPY「エイリアンセックスフレンド」(未発売)です。「いつか結構本気で/ジェラシーや心配してくれる?」
https://www.instagram.com/p/BmD2yF0nn-F/?utm_source=ig_embed&utm_campaign=embed_video_watch_again
https://www.instagram.com/p/Bm0z-S4hCtk/?taken-by=spank_happy

あとは10位までそれぞれ簡単なコメントを。

1.Lamp『彼女の時計』(5/15)
あまりにも美しすぎる80’sブラジルAORマナー。こんなことやってる日本人はやっぱり他にいないし、この20枚の中で確実に一生、そして何度も聴くと断言できるので1位。リキッドルームワンマン(祝即完!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)はぶったまげるほど良かったです。

2.TAMTAM『Modernluv』(6/6)
シーンとか特徴的な動きではないだろうけど、evening cinema→ディープファン君→TAMTAM→中村佳穂というリリースの流れは「自分の音楽原体験のひとつとなっていた90年代後半R&BなJ-POPの復権」を高らかに宣言してくれているようで俺得以外の何物でもなかった。韓国も掘っていけばとんでもない数の自分好みトラックが溢れていることはわかってるんだけど、追いきれず後悔。「どうしてるかなってタイミングで/必ず君からのメッセージ」(Esp feat. GOODMOODGOKU)という歌詞で何度でもグッときてしまう。

3.The 1975『A Brief Inquiry Into Online Relationships』(11/30)
1975、恥ずかしながら完全に聴かず嫌いしてたわけですが、ちゃんと聴いてみたらぶったまげるほどの「現在でさえダサいとされてそうな80’sマナー」を各作品でぶっこみまくっててホントにすみませんでした!!!状態だった。テン年代後半、もうどうにもロックバンドが勝てなくなった世界で、バンドフォーマットによるポップ音楽をどう表現するかというひとつの最適解だとおもう。

4.evening cinema『CONFESSION』(2/14)
リリース当時、自分のFacebook(公開設定)に長文でいろいろ書いたのでそちらを読んでいただければ。「ベイビー、君が好きだ」という歯の浮くようなワードをやっぱりリアルで口にしていかなきゃダメだ。今だからこそ。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=1624288990990074&set=a.496453540440297&type=3&theater

5.Banderas『La Bandera』(8/10)
2016年のフジロックで観て以来、サルサの魅力を自分に教えてくれた大切なバンドのようやっとな1st。サルサ、まだ1ミリも詳しくないけど「最初から最後まで1秒も途切れることなく良い塩梅で、そして人力で踊らせてくれる最高のダンスミュージック」だとおもっている。12月の渋谷クアトロリリパも超絶最高でした。

6.BTS『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』(5/18)
このアルバムを最初に聴いた時は本当にぶったまげた。もう英米だけ聴いてればOKな二強時代は完全に終わりを告げて、ここからあそこからもうわけわかんない場所から最高の音楽が登場し、それを英米のシーンでも正しく評価される時代がやってきたのだなと。

7.Mr Twin Sister『Salt』(10/25)
The 1975におそらく近いであろう問題意識をよりスムースに表現してて、ステレオラブフォロワーだった初期からここまで進化したか…という感慨。

8.国府達矢『ロックブッダ』(3/21)
ロックという名の実質セラピー。「日本でロックを聴く」ということの喜び。やついフェスでの楽器ゼロ・CD音源垂れ流し・包帯を顔をぐるぐる巻きにしたミイラ姿でのダンスだけという狂気のライブ、最高でした。

9.The Pen Friend Club『Merry Christmas From The Pen Friend Club』(11/14)
クリスマスアルバム大好き人間なので、出してくれるだけで評価がうなぎ登りになるわたしですが(音楽って曲調に感情が結構動かされるし、クリスマスの最高に浮かれポンチになった雰囲気だけを味わいたい瞬間が一年中あるのです)、過去カバー音源のマッシュアップの腕前も含め、まごうことなきペンクラ最高傑作に仕上がっているとおもう。

10.シャムキャッツ『Virgin Graffiti』(11/21)
キャリア全体から見れば『AFTER HOURS』(2014)以降期のサウンドの1枚なんだろうけど、それでも最高傑作と言わずにいられないのは、彼らなりのスタジアムロックでありアンセム「このままがいいね」をモノにできた(そしてホールワンマンも成功させた)ことがまず1点、そして全曲曲調が違うバラエティに富んだ内容になってることから、小中学生ぐらいの頃にミスチルとかスピッツとかから「ロックバンド」に触れる最初の1枚としても十二分にオススメできるポップロックに仕上がっていて、それを他の誰でもないシャムキャッツが成し遂げてくれたのだ!ということを言わずにはいられない。

11.中村佳穂『AINOU』(11/7)
12.ツチヤニボンド『Mellows』(10/31)
13.ARKHAM『Propaganda』(12/19)
14.ENDRECHERI『HYBRID FUNK』(5/2)
15.ayU tokiO『遊撃手』(7/25)
16.ディープファン君『PRIVATE BLUE』(6/13)
17.Jamie Isaac『(04:30) Idler』(6/27)
18.Silva『Brasileiro』(7/10)
19.STUTS『Eutopia』(9/5)
20.ASIAN KUNG-FU GENERATION『ホームタウン』(12/5)

【よかったライブ】
2018/4/22 KOHH@渋谷O-EAST(CROSSING CARNIVAL)
2018/4/28 Lamp@恵比寿リキッドルーム
2018/5/13 FINAL SPANK HAPPY@新木場スタジオコースト(TABOO LABEL presents “GREAT HOLIDAY”)
2018/6/16 HALF MILE BEACH CLUB@下北沢Basement Bar
2018/6/17 国府達矢@渋谷Glad(YATSUIFESTIVAL!2018)
2018/6/30 カーネーション@日比谷野外音楽堂
2018/7/27 TUNE-YARDS@フジロック
2018/7/28 シャムキャッツ@フジロック
2018/7/28 CARLA THOMAS & HI RHYTHM W/VERY SPECIAL GUEST VANEESE THOMAS@フジロック
2018/7/28 KENDRICK LAMAR@フジロック
2018/7/28 民謡クルセイダーズ@フジロック
2018/7/29 ANDERSON .PAAK & THE FREE NATIONALS@フジロック
2018/7/29 MISIA@フジロック
2018/7/29 菊地成孔(DJ) feat. SPANK HAPPY@フジロック
2018/8/19 CHANCE THE RAPPER@サマーソニック
2018/8/19 George Clinton & Parliament Funkadelic@サマーソニック
2018/8/19 TOM MISCH@サマーソニック
2018/8/19 HIGHER BROTHERS@サマーソニック
2018/8/19 Zion.T@サマーソニック
2018/9/28 Lamp@東京キネマ倶楽部
2018/10/9 坂本慎太郎@恵比寿リキッドルーム
2018/11/13 BAD HOP@日本武道館
2018/11/24 ayU tokiO@渋谷7th floor
2018/12/7 THE NOVEMBERS@キリスト品川教会 グローリア・チャペル
2018/12/8 GUIRO@渋谷7th floor
2018/12/8 ツチヤニボンド@渋谷7th floor
2018/12/15 Banderas@渋谷クラブクアトロ

※これまでの年間ベスト
Jimbo’s Best Albums & Songs of 2017
Jimbo’s Best Albums & Songs of 2016
Jimbo’s Best Albums & Songs of 2015

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