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2016-10-30

象の小規模なラジオ#449 2016.10.29

ウェブマガジン「Tokyo Loco magazine」特集

出演:成川勇也、やなはる、ジンボユウキ
ゲスト:藤森未起(Tokyo Loco magazine主宰)

今週は、東京を中心に活動しているアーティストや、東京で行われるイベントにフォーカスした読み物サイト「Tokyo Loco magazine」を主宰する藤森未起さんをゲストに迎えてお送りしました。
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Tokyo Loco magazineはその名の通り、「東京を首都=日本の代表ではなく、いち地域(ローカル)として捉えたうえで、そこで起こっている興味深い物事やそれを手掛けている人にフォーカスしたウェブマガジン」です。

象ラジオのリスナーとしてはエンジニアの馬場ちゃんインタビュー(誰かが必ずやるべき仕事であり、馬場ちゃんの関わった全作品リストは圧巻!)

や、ココナッツディスク吉祥寺店の店長、矢島和義さんインタビュー(90年代の渋谷系からゼロ年代のレコード不況、からの豊穣な2010年代東京インディまでを、おそらく初めて繋がった歴史として描いた素晴らしい内容!)

なども話題になりましたし、シャムキャッツの自主企画「EASY」で販売されたロングインタビューZINEでその名前を知った方もいるかもしれません。

ポップカルチャーの分野でもそうでなくとも構わないのですが、「東京のローカリティ」とは言葉で表現するとどういうものなのか、ぼくは未だによくわかりません。この1〜2年、仕事で全国の都市部に行くことが増えたんですが、素敵なショップ、美味しい飲食店、居心地の良いイベントスペースなどなど、東京にだけあって他の都市には無いものなど、もうあんまり無いことを改めて実感するからです。「多様な趣味嗜好を持った人やお店が、それぞれ遠くない距離で密集している」という無形の強みは確かにあると思いますし、無形だからこそ一朝一夕では形成し得ない魅力なのでしょうが、いまいちピンと来ない部分があります。単にそのありがたさが実感できていないだけだと思いますが。

そうしたなかで「興味深い物事やそれを手掛けている人」をレポートやインタビューというかたちで改めて振り返ると「ああ、こんなイベントがあったな」、「こんなナイスなことをやっている人が居るな」ということが記事というかたちとなって実感を帯びてきて、改めて記録に残しておくことの重要性を感じます。

このサイトの、というか彼女の筆致で好きなところは「これが今チェックしなくちゃいけない最先端のカルチャーだ!どや!!!」という押し付けがましさが無いところです。編集者・ライターっていうのは扱う対象への愛着もあって、ついついそういう方法論を使いがちなんですが、その辺りが良い塩梅に抑制されていることで、とてもとっつきやすいメディアになっていると感じます。

いわゆるファッション誌文化的な「わたしたちだけがわかる、丁寧で上質な暮らし」みたいなオシャレスノッブさもなく、サブカルサブカルした濃厚で排他的な感じでもなく、もっとこう、良い意味で肩の力が抜けていて、その対象や周辺文化をまったく知らなくても「面白そうだからこの人の活動をちょっとチェックしてみようかな。イベントやってたら行ってみようかな」ぐらいの良い塩梅の気持ちにさせてくれるんですね。
「カルチャーと日常」みたいなこと言っても、「ケッ!オサレ野郎が!」みたいなことを感じる人もいるわけじゃないですか。ぼくもそういうことを感じることが無いわけではないんですが、ここで扱われてる物事って、「カルチャーと日常」以外の何物でもないんですよね。もう当たり前に「普段は別の仕事をしながらバンドやイベントをやっている」ということが語られるなかで、「カルチャー」が商業上の要請(憧れられる存在だからこそ大規模なビジネスが成立する)も内包した特権的ななにか、ではなくて、「日々の生活をちょっと楽しくするための営み」というレベル感で統一されているというか。

とはいえこのサイトに限らず、自分たちのラジオもそうなんですが、何らかのカルチャーにコミットするというのは意欲も時間もお金もかかるので、30代、40代になってもこういうことが続けられるのだろうか(ポップカルチャーなんだから若い子がやった方が良いんじゃないか…)という疑念と戦っていくことが当面の課題になるような気がしています(笑)。「日常」と言ってもそれはいつまで続けられることなのか。お互いゆるく長くやっていけたらいいですね。ほんと。(ジンボ)


Onair Track List

  1. Limited Express (has gone?) / MOTHER FUCKER ※新譜紹介
    『ALL AGES』収録
  2. くるり / グッドモーニング ※藤森さん選曲
    『アンテナ』収録
  3. シャムキャッツ / INTERLUDE ※藤森さん選曲
    『大車輪5コンピレーションCD「21POP」』収録
  4. おやすみホログラム / forever young(Have a Nice Day! cover) ※藤森さん選曲
    『おやすみホログラム』収録
  5. 大森靖子 / 夏果て ※やなはる選曲
    『魔法が使えないなら死にたい』収録
  6. FISHMANS / バックビートにのっかって ※ジンボ選曲
    『宇宙 日本 世田谷』収録
  7. Hara Kazutoshi+野田薫 / 楽しい暮らし ※藤森さん選曲
    『Hara Kazutoshi+野田薫』収録
  8. □□□ / いつかどこかで ※成川選曲
    『マンパワー』収録
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