象の小規模なラジオ#484 2017.07.01
象選曲回:ジンボ選曲回
出演:成川勇也、やなはる、ジンボユウキ
今週はゲストなしの象選曲回。パーソナリティー誕生日ウィーク企画第3弾、ジンボ選曲をお送りしました。
各パーソナリティの誕生日月恒例、1時間まるごと個人選曲回ですが、ジンボのテーマは「小中学校時代オールタイムベスト」にしました。
生まれて初めて作家単位で小説を読むようになったきっかけである原田宗典さん(あえて言いますが『メメント・モリ』も最高でした)が、よくエッセイで「昔のことを思い出したければ、その頃の身の回りの地図を書いてみると良い」と書いていて。
久山との旅 / 徒然なるままに-1 原田宗典
これの音楽版をやってみると、今の自分の趣味嗜好とつながるところも出てくるのでは?ということでやってみました。
実際やってみると確かに楽しくて「あ〜あるある!」という懐かしい気分以上に、まだジャンル分けや音楽を比喩する言葉を知らない頃、音楽を聴いてどんな感情を抱いていたか、ピュアな気持ちを思い出せたのが自分にとってはすごくよかったです。
以下、初回放送時に自分のTwitterに書いていた副音声のようなものにちょっとだけ手を入れて貼っておきます。
①チャミグリ! / Lonesome Boy’s Life 『思春期』(1999)収録
自分にとっての(広義の)サブカルの入口は
ゲルゲットショッキングセンター(ニッポン放送「オールナイトニッポンSUPER」の前までやってたラジオ番組)/原田宗典/スワロウテイル
の3つ。TVでやっている、オリコンに入っているetcのマスカルチャー以外にも、自分で探しに行きさえすれば世界には面白いものがこんなにも転がりまくってるという衝撃(小学5年生ぐらい)。
で、そのゲルゲットショッキングセンターのパーソナリティだった井手功二がやっていたのがチャミグリというバンド。2001年にバンドを解散した後は職業作曲家としてジャニーズ系を中心に曲提供をしてます。Wikipediaによると乃木坂46とかにも曲提供してる。
彼がDJ〜ヒップホップの素養もあったので、90年代ライトメロウの系譜に入れても良いよなあと思ったり。
② SMAP / Fly 『Smap Vest』(2001)収録
↑シングルは1999年。シングルバージョンをかけてます
以前、矢野利裕さんに出演してもらいSMAPミックスを作ってもらった時にもかかってたと思うけど、この曲がいちばん好き。R&B路線の極地。
キムタクソロボーカルのパートがちょうど自分の声域に合ってて、小学5年生ぐらいの頃にカラオケとかで気持ちよく歌ったことが思い出される(笑)
③Sugar Soul / Garden 『Sugar Soul』(2003)収録
↑シングルは1999年。シングルバージョンをかけてます
自分がいちJ-POPリスナーとして本当に幸せだったな、今につながる財産だったなと心から思えたのは、90年代後半からゼロ年代前半にかけてのディーヴァブームをリアルタイムで体験できたこと。
日本でほぼ唯一と言っても過言ではないぐらい、アメリカ・イギリス勢とも戦える音楽がオリコン上位にガンガン食い込んでいた時代なのではないでしょうか。
そんな音楽を当時小学生で、R&Bのアの字も知らないキッズがドキドキしながら「なんだかわかんないけどすげー良い!」と聴いていたわけです。
「BELIEVE」ぐらいまでの初期MISIAなんて今でも死ぬほど聴いてます。
ほんとはMISIAをかけたかったけど、こっちの方がラジオでかかりそうにない&若い子が知らなさそうなのでセレクト。
ブギー・バックもGrateful Daysもいいけど、やっぱシュガーソウルのGardenっしょ。このシングルが90万枚も売れた時代がかつては存在していたのです。
④ゆず / シャララン 『トビラ』(2000)収録
イントロのエコーマシマシな感じがキュンキュンする。ゆずに影響されてアコースティックギターを買ってもらい、それが高校時代に山崎まさよしへと行き、遂にはナンバーガールへとたどり着きます。
ゆずの音楽性ってどの辺りに影響受けてるのか未だによくわからなくて。成川さんが言った「長渕剛じゃない?」ってのも確かに!って感じなんだけど、この二人のポップネスの表出ってなんかフォークっつーのも違う気がするな、なんだろう。とよくわからないところが飽きない理由なのかともおもったり。
⑤岡北有由/ わたし 『ベイスメント・ダイアリー』(2001)収録
from路上ライブtoメジャーレーベルな女性SSW。契約終了後はUKロックなバンド「PABLONIK」を結成、さらにその後渡英し2008年に「Nedry」というリーダーバンドを結成。11年には残響レコードから逆輸入もされてます。バンドFacebookを見る限りまだ活動中の模様。めちゃ格好良い。
ソロのメジャー時代は今でも中古で安く買えるんでぜひ聴いてほしい。
今聴くとモロにレディへの影響がうかがえる曲がちょこちょこあって、意外にこういうのありそうでなかったよなあと思ったり。
「確かにジンボくん、こういう声質のオルタナテイスト入ってる女性SSWが今でも好きだよね」と言われました。
おぼろげな記憶だけど、ミュージックマシーンがやってたネットラジオ?で岡北有由をかけてた人が居て「俺はこのラジオを通じて岡北有由をかけられてよかった」みたいなことを掲示板に書いていた。ぼくも今同じ気持ちです。
⑥aiko/ ナキ・ムシ 『小さな丸い好日』(1999)収録
初めて聴いたのは例に漏れず「桜の木の下で」なのでそこからかけても良かったんだけど、あえてメジャー1stから。
aikoを聴いて恋に恋してた時期(笑)は今思うとそれはそれで重要な感情の芽生えというか、「こういう気持ちになったら人を好きになったってことなのかなあ」みたいな、昨今まぁ忘れがちな気持ちを思い起こさせてくれたりするので、ポップミュージックってやっぱ良いなあ、としみじみします。
ラジオで言及したkenzeeさんのaiko全曲レビューのURLも貼っておきます。まじで凄まじく良いのでぜひ一読を。
aikoナメすぎとの批判を受けましたので全曲聴き会を行います。(第一回「小さな丸い好日」)
⑦BUMP OF CHICKEN / ダイヤモンド 『jupiter』(2002)収録
この頃自分が新しい音楽を知る場所がほとんど地元のCDレンタルショップ(TSUTAYAじゃなかったけど名前失念)と新星堂だった。
そして、思い返せば自分がオリコンチャートのポップソングではない「バンド」として初めて好きになったのがバンプだったのかも。
小〜中時代通して放送部で、お気に入りアーティストを好き放題かける権利を得ていたわけですが、天体観測が出るか出ないかの頃にパワープレイ(笑)しまくってました。
⑧TRICERATOPS / FEVER 『THE GREAT SKELETON’S MUSIC GUIDE BOOK』(1998)収録
メジャーデビュー前後のバンプとほぼ同時期にトライセラとバインとも出会い、聴きまくっていた中学時代。
Mステなんかに出る「バンド」の多くが、うまく言えないけど「楽器を鳴らしてる感」を感じなくてなんだかなあ、と思うなか、ギター・ベース・ドラムが全て意味のある音として独立している格好良さにたまらなくヤラれてしまいました。
⑨GRAPEVINE / 光について 『Lifetime』(1999)収録
中学生時代、トライセラとバインを聴く時のドキドキ感、心がかきむしられるような、うわーメロウ(という言葉を当時知らなかったけどそうとしか言えない感じ)でとんでもなくヤバいもの、大人の音楽(当時の感想)を聴いてるという体験ができたのは今でもすごく幸せな記憶として覚えてる。
ミスチルでもスピッツでもブランキーでもミッシェルでもラルクでもGLAYでもなく、そしてインディも含めたロックシーン的なるものがなんとなくわかる前のピュアな時期、トライセラとバインのことを好きになれて「自分の場合は」とてもよかった。と今では思っています。
⑩John Lennon / Love 『PLASTIC ONO BAND』(1970)収録
生まれて初めて買ってもらった洋楽のCDがジョン・レノンのベストでした。リスニングの授業?でかかっててビビっときたやつ。
ちょっとアシッド・フォークが入ってて今聴いても良い曲。
あとは成川さんから「せっかくだし元々のオールタイムベストも書いておいたら?」と言われたので貼っておきます。
小中学校オールタイムベストと被っている曲の文言は割愛。
①チャミグリ! / Lonesome Boy’s Life 『思春期』(1999)収録
②Sugar Soul / Garden 『Sugar Soul』(2003)収録
③NUMBER GIRL / I don’t know(live) 『サッポロOMOIDE IN MY HEAD状態』(2003)収録
初めて聴いたのが解散ライヴアルバム。15歳の冬、何一つうまくいかず、通算1000日ぐらいイライラしかしてなかった人生の暗黒時代に、なんとなしにMDの音量をフルボリュームにしたら周りの音が一切聴こえなくなり、この無鉄砲な叫び声が、1弦から6弦までガッシガシに引き倒されるテレキャスのコードが、アヒト・イナザワの千手観音みたいなドラムが、そしてオルタナティブ・ロックこそが最強のロック音楽だということを教えてくれました。
ナンバガはバンプと並んで良くも悪くも以降の日本のロックバンドに最も影響を与えたグループの一つだとおもう。
1万円ぐらいまでなら余裕で出すので早くアナログ化してください。
④Sonic Youth / Teenage Riot 『Daydream Nation』(1988)収録
象ラジオ初出演時にもかけました。ナンバガオタになり、向井秀徳に影響を与えたというオルタナバンドを片っ端から聴き漁る毎日で出会った、聴きづらいにもほどがあるバンドの、ほとんど最初と言ってもいいぐらいの騒やかでポップな楽曲。世界一短い7分間。
もう15年ぐらい聴いてるけどこのバンドというかサーストン・ムーアの楽曲は何をどう発想したらこうなるのかが全く理解できないものが多い。でもそれがクセになってくる。
90年代USオルタナの魅力は多々あれど、自分が最大の魅力に感じているのは歪ませたパワーコードでも単音ピロピロでもなく、フォークのように全ての弦をガッシガシ弾き倒す、狂おしいまでのコードストロークの推進力だとおもう。
さっき言ったナンバガに影響を受けたバンドは数多くあれど、それがわかっているバンドはBase Ball Bearと昆虫キッズだけだった、ということは強く指摘しておきたい。
⑤Franz Ferdinand / Take Me Out 『Franz Ferdinand』(2004)収録
15歳の時に初めてお小遣いでリアルタイムに買った洋楽CD2枚のうち1枚(もう1枚はソニック・ユースの「ソニック・ナース」)。
バンドor打ち込み、ロック、ソウル〜ディスコ問わず、「自分にとってダンスミュージックはこういうものが好きだ」というのが定まった気がする。
ダンスミュージックはただただ享楽的で、頭の悪そうなやつが好きだ!
これを買ってからちょうど10年後にフジロックで観たけど、ほとんどの客が大友良英あまちゃん盆踊りに行ってて、かなり空いてるグリーンステージでそれはもうクソほど踊りまくった。楽しくなりすぎて延々と走り回ってた女の子はいま一体何を聴いてるだろう。
⑥nhhmbase / 9 / 8 (Live) 『alive at the wall』(2009)収録
大学時代の青春。
入学直後のある軽音サークルにCRJの人がいたようで、新歓ライヴということで部室棟の練習スタジオでパニックスマイル、blgtz、そしてnhhmbaseが出るイベントを企画してて、パニックスマイル目当てで行ったら見事にnhhmbaseに一目惚れしてしまった。
当時は(轟音)ポストロック全盛期だったけど、そこにビートルズとパンクを持ち込んでこんなにまで盛り上がってるバンドなんか他にひとつも無かったし、世界的にも結構稀だったんじゃないかと思う。
今ほどUSインディが注目されてなかった頃のBATTLESとかDeerhoofとか、後のアニコレ、ダーティ・プロジェクターズみたいなブルックリン勢とか、「エレクトロニカ以降のこれから何か新しいすごい事が起こるんじゃないか」というワクワク感はとにかくすごかった。
⑦The Sea And Cake / The Biz 『The Biz』(1995)収録
初めて聴いたのが25歳ぐらいの頃だったか。後にブラジル音楽に触れるようになってからサム・プレコップがブラジル音楽からの影響も強いと知り、改めて聴き直すとギターのフレージングがボサノヴァを高速化させていることが多いと気づいた時の衝撃たるや。極限まで音要素が削り取られているのに、なんでこんなにも「これが完成形だ」と感じるのかがいまだによくわからない。
「音響」というワードをもう誰も使わなくなって久しいけど、単に演奏やメロディだけでなく「音が鳴っているという空間全体、すべてを楽しむ」、というか、よく言われる話だけどジョン・ケージが無響室に入って無音の「4分33秒」を作ったみたいな、「新しいアイデア、ものの感じ取り方を通じて音楽の聴こえ方も変わる」という瞬間が自分はとても好きだ。それは同時に、自分がオルタナティブ・ロックの魅力のひとつとして感じる「最終的なアウトプットが良ければ、考えうるどんなことをしたっていい」に通じるものがあると感じるので。
⑧The Beach Boys / Don’t Worry Baby 『Shut Down Volume 2』(1964)収録
ビーチボーイズにドハマリしたきっかけがどうしても思い出せない。その前に既にハイ・ラマズとかは聴いてて、ロック名盤を聴くノリで「Pet Sounds」を聴いて普通に良いなと思ったけどなんだったんだろう。でも今ではライヴを観て号泣するのはビーチボーイズとブライアン・ウィルソンだけ。
かける曲は伝記映画「ラブ&マーシー」のラストでもやっぱり号泣した「Wouldn’t It Be Nice(素敵じゃないか)」と迷ったけど、この曲を一番よく聴いてるので。
物事がすごく良くなりそうな予感と「本当にこれ大丈夫なのか!?」という不安とがないまぜになるなかでサビの「心配ないわベイビー」でオールオッケーな感じにたまらなく救われる。死ぬほど疲れてる時に聴くのが大体これかサム・プレコップのソロ1st。
⑨Lamp / 雨降る夜の向こう 『ランプ幻想』(2008)収録
この数年で一番衝撃を受けたバンド。最初は2014年に成川さんに教えてもらった最新アルバム『ゆめ』を聴いて、サニーデイ以降のはっぴいえんど系シティポップの系譜にある感じかな、と思って聴き進めたら最終曲の「さち子」に驚愕。一時期1か月ぐらいLampしか聴いてなかった。
シティポップmeetsブラジル音楽という組み合わせが、特にメロディ面で自分にとってはすごく新鮮で、そのままブラジル音楽にもハマっていった。すごく気持ち良いと感じるのに、いざ口ずさもうとすると「あれ?ここから上がるんだっけ下がるんだっけ?」となるあの感じ。
選んだのはメロディ、歌詞、バンド演奏、ストリングス・アレンジ、総合100点!優勝!ないちばん好きな曲。
⑩菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール / 戦前と戦後 『戦前と戦後』(2014)収録
彼の音楽、そして「粋な夜電波」がなければたぶんジャズ、R&B、ヒップホップ、ラテン音楽をちゃんと聴き始めたのがたぶん5〜10年ぐらい遅れてたと思う。
「普通の恋」をかけようか迷ったけど、今のところ彼の(ポップスサイド)キャリア最高傑作だと思われる「戦前と戦後」をもっともっと多くの人に聴いてほしいので選んだ。
「戦争に反対する唯一の手段は、各自の生活を美しくして、それに執着することである」という吉田健一の言葉を地で行くような音楽。50’s〜60’sアメリカンポップスマナーの、ただただ「君のことが好きだ」以外何も言っていないような歌詞もとても好きだ。〔ジンボ〕
Onair Track List
- チャミグリ! / Lonesome Boy’s Life
『思春期』収録 - SMAP / Fly
『Smap Vest』収録 - Sugar Soul / Garden
『Sugar Soul』収録 - ゆず / シャララン
『トビラ』収録 - 岡北有由/ わたし
『ベイスメント・ダイアリー』収録 - aiko/ ナキ・ムシ
『小さな丸い好日』収録 - BUMP OF CHICKEN / ダイヤモンド
『jupiter』収録 - TRICERATOPS / FEVER
『THE GREAT SKELETON’S MUSIC GUIDE BOOK』収録 - GRAPEVINE / 光について
『Lifetime』収録 - John Lennon / Love
『PLASTIC ONO BAND』収録